IKEAのスタイリッシュな店舗でおしゃれなパキラを見つけて購入したけれど、「植え替えの時期はいつがベストなのか?」「このまま育てても大丈夫なのか?」と悩んでいませんか。そのまま育てていたら枯れるのではないかと心配になったり、今の鉢のままでいいのか迷ったりすることもあるでしょう。
実は、IKEAをはじめとする多くのインテリアショップで販売されている観葉植物に使われている土は、生産効率や輸送コストを考慮した少し特殊なものが多く、日本の一般的な室内環境でそのまま育てると、コバエなどの不快害虫が発生する原因になることもあります。大切なパキラを長く元気に、そして清潔に育てるためには、日本の気候とあなたの部屋の環境に合った「適切な土」を選んで、正しい手順で植え替えてあげることが何より大切です。
- IKEAで購入したパキラを植え替えるべき具体的な理由とタイミング
- 室内でも虫がわきにくいおすすめの清潔な土と、生育に適した鉢の選び方
- 初心者でも失敗しないための写真付きのような具体的な植え替え手順と剪定のコツ
- 植え替え直後のデリケートな時期の水やりや置き場所など、徹底したアフターケアの方法
IKEAのパキラを植え替えるべき理由と時期
IKEAのグリーンコーナーで見かけるパキラは、デザイン性が高くて非常に魅力的ですよね。価格も手頃で、ついついカートに入れてしまいたくなるアイテムです。でも、買ってきたそのままの状態で何ヶ月も育て続けると、意外なトラブルに見舞われることがあるんです。ここでは、なぜIKEAのパキラには「早めの植え替え」が推奨されるのか、そして具体的にいつ行うのが植物にとってベストなのかについて、私の実体験を交えて詳しくお話しします。
虫がわく前に土を入れ替える重要性

IKEAで販売されている観葉植物の多くは、見た目も美しく手頃ですが、使われている「土」には少し注意が必要です。多くのIKEAの鉢植えでは、ピートモスやココヤシ繊維(ココピート)などを主体とした土が使用されています。
この土は、非常に軽量で輸送コストを抑えられるうえ、保水性が極めて高いため、生産地の温室環境や店舗での管理には非常に適しています。しかし、これが日本の一般的な住環境、特に気密性が高く風通しが制限されがちなマンションや戸建ての室内となると、話が変わってきます。
日本の室内環境でこの「スポンジのように水を吸う土」を使い続けると、水やりの後に土がなかなか乾かず、鉢の中が常にジメジメとした多湿状態になりがちです。私が実際に経験して最も困ったのが、この湿った有機質の土が、不快なコバエ(主にクロバネキノコバエ)にとって「最高の産卵場所」になってしまうことでした。
「部屋の中で小さな黒い虫がチラチラ飛んでいるな」と気づいた時には、すでに鉢の中で大量発生していた……というケースは、実はIKEAの植物に限らず、海外仕様の用土を使った観葉植物ではよくあるトラブルです。彼らは腐植質(有機物)をエサとするため、有機質たっぷりの湿った土がある限り、どれだけ表面上の虫を退治しても、土の中で卵が孵り、イタチごっこになってしまいます。
もちろん、IKEAの土自体が粗悪というわけではありません。生産・流通の過程では非常に理にかなった素材です。しかし、「室内で清潔に、虫を見ることなく育てたい」という私たちのニーズには、少しミスマッチな側面があるのも事実です。
だからこそ、私は購入後にできるだけ早く、環境そのものを変える「土の全入れ替え」を行うことを強くおすすめしています。殺虫剤で対抗するよりも、虫のエサとならない「無機質の土(赤玉土ベースなど)」に変えてしまうほうが、根本的かつ永続的な解決策になるからです。
ここがポイント
もし購入した時点で、すでに土の表面を虫が歩いていたり、鉢を持ち上げた時にプンと小さな虫が舞ったりする場合は、迷わず土をすべて落として植え替えましょう。根についている古い土を水で完全に洗い流してリセットすることが、殺虫剤を部屋に撒くよりも、はるかに確実で安全な対策になります。
植え替えに適した時期は5月から9月
パキラの植え替えを成功させるための最大の秘訣は、人間都合のスケジュールではなく、植物のリズムに合わせてあげることです。具体的には、パキラが冬の休眠から目覚め、活発に新芽を出し始める「成長期」に行うのが鉄則です。カレンダーで言えば、気温が安定して暖かくなる5月から9月頃がベストシーズンと言えます。
パキラの原産地は中南米の熱帯地域です。そのため、日本の春から秋にかけての暖かい気候は、彼らにとって故郷に近い過ごしやすい環境になります。この時期のパキラは生命力に溢れており、植え替え作業で古い土を落としたり、多少根が切れたりしても、驚くべき回復力ですぐに新しい根を伸ばしてリカバリーしてくれます。
中でも、私が個人的に「最も失敗が少ない」と感じておすすめしたいのが、「梅雨入り前〜梅雨の時期(5月下旬~7月上旬)」です。
私たち人間にとってジメジメした梅雨は不快ですが、熱帯生まれのパキラにとっては、まさに「天然の加湿器」の中にいるような天国のような環境です。湿度が高いおかげで、根がまだ水を十分に吸えない状態でも葉からの水分蒸発(蒸散)が抑えられ、植え替え直後の「水切れ」によるダメージを最小限に防ぐことができるからです。
9月に入っても植え替えは可能ですが、10月以降は気温が下がり始め、徐々に成長が緩やかになっていきます。寒冷地にお住まいの方や、冬の寒さが厳しい環境で育てる場合は、根が寒さに耐える準備期間を確保するためにも、できるだけ遅くとも9月中旬までには作業を完了させておくのが安心です。
真夏の植え替えには注意が必要
「夏なら元気だろう」と思いがちですが、近年の日本のような35℃を超える猛暑日は、さすがのパキラもバテ気味になり、成長が鈍ることがあります。
炎天下やコンクリートの照り返しがある場所での作業は、根に致命的な「高温障害」を与えるリスクがあるため絶対に避けてください。どうしても7月下旬〜8月に植え替える場合は、比較的涼しい早朝や夕方を選び、風通しの良い日陰で手早く作業を行うよう心がけましょう。
冬の植え替えで失敗しないための注意点

「冬にIKEAでパキラを買ったけれど、土の状態がどうしても気になる」「不注意で鉢を倒して割ってしまった」……そんなトラブルは季節を選んでくれませんよね。しかし、原則として冬(11月~3月頃)の植え替えは避けるべきです。
パキラは熱帯原産の植物です。日本の冬の寒さは彼らにとって過酷で、この時期は生命維持のためにエネルギーを使い、成長をほぼ止める「休眠期」に入っています。人間で言えば、深い眠りについている状態です。この時期に根をいじることは、手術のような大きな負担を強いることになり、ダメージから回復できずにそのまま枯れてしまうリスクが非常に高いのです。
しかし、どうしても緊急で植え替えが必要な場合(例えば、根腐れで瀕死の状態や、鉢が破損した場合、あるいは生活に支障が出るほど虫が大量発生している場合など)は、通常の植え替えとは全く別のアプローチが必要です。これは「植え替え(リフォーム)」というよりも、「救命処置(緊急手術)」と捉えてください。
冬の緊急植え替え 3つの鉄則
- 根を絶対に崩さない(鉢増し):根についた土を落とそうとしてはいけません。根鉢(根と土の塊)を一切崩さず、そのままそっと新しい鉢に移し、隙間に新しい土を足すだけの「鉢増し」という手法をとります。根への刺激をゼロに近づけることが生存率を上げます。
- 温度管理の徹底(15℃以上):作業後および管理中は、常に15℃以上を保てる暖かい部屋に置くことが必須条件です。特に注意したいのが「夜間の窓際」です。昼間は暖かくても夜は急激に冷え込むため、夜だけは部屋の中央や高い場所(暖かい空気は上に溜まるため)へ移動させてください。
- 水やりと肥料の禁止:植え替え直後の水やりは、汲み置きした常温(20℃前後)の水を与えます。その後は「土が乾いてから数日経ってから」と、かなり控えめに管理します。また、肥料や活力剤は絶対に与えないでください。弱っている時にステーキを食べさせるようなもので、「肥料焼け」を起こしてトドメを刺してしまいます。
もし、「鉢が少し小さい気がする」や「土を良くしたい」といった緊急性の低い理由であれば、春が来て桜が咲く頃までじっと待つのが一番の愛情です。その間は水やりを控えめにし、乾燥気味に管理することで、パキラの樹液濃度が高まり寒さへの耐性もアップします。
室内向けのおすすめな土と鉢の選び方
室内でパキラを育てる際、衛生面と健康面の両方で鍵を握るのが「土選び」です。屋外であれば多少の虫や匂いは気になりませんが、リビングや寝室となると話は別ですよね。私がこれまでの失敗を経てたどり着いた結論は、「室内で育てるなら、室内専用の土を使う」というのが最短の正解だということです。
特に初心者の方や虫が苦手な方に強くおすすめしたいのが、プロトリーフや花ごころといった信頼できる園芸メーカーから販売されている「室内向け観葉植物用の土」です。これらの製品は、コバエの発生源となりやすい堆肥(有機物)を極力使わず、赤玉土や鹿沼土といった「無機質」の素材をベースに配合されています。エサとなる有機物がないため虫が寄り付きにくく、カビやキノコも生えにくいのが最大の特徴で、キッチン周りや寝室にも安心して置くことができます。
100均の土には注意?
100円ショップの土が全て悪いわけではありませんが、製品によっては殺菌処理が甘かったり、最初から虫の卵が混入していたりするケースも報告されています。「とにかく安く」よりも「清潔に」を優先するなら、ホームセンターや園芸店で専用土を選ぶ方が、長い目で見れば安心です。
もし、ご自身で土をブレンドしてコストを抑えたい、あるいは水はけを自分好みに調整したいという「こだわり派」の方は、以下の配合比率を参考にしてみてください。パキラが好む「水はけ(排水性)」を最優先にした配合です。
自分でブレンドする場合の配合例
| 素材 | 比率の目安 | 役割・特徴 |
|---|---|---|
| 赤玉土(小粒) | 6〜7割 | ベースとなる基本用土。無機質で清潔。保水性と排水性のバランスが良い。 |
| 腐葉土(完熟) | 3〜4割 | 栄養分とふかふかした土壌環境を作る。
※虫がどうしても嫌な場合は、ここを「ベラボン(ヤシの実チップ)」に変えるか、入れずに化成肥料で補うのがおすすめ。 |
| パーライト/軽石 | 1〜2割 | 土を軽くし、水はけ(排水性)をさらに高めて根腐れを防ぐ調整役。 |
次に「鉢選び」ですが、サイズ選びで失敗する方が非常に多いです。基本ルールは「現在の鉢より一回り大きいサイズ(直径プラス3cm程度)」を選ぶこと。例えば、現在が4号鉢(直径12cm)なら5号鉢(直径15cm)が目安です。
「どうせ大きくなるから」と、いきなり大きすぎる鉢(4号→8号など)に植え替えるのはNGです。根の量に対して土の量が多すぎると、水やり後に土がなかなか乾かず、常に湿った状態が続いて根腐れの原因になります。
素材は、軽くて扱いやすい「プラスチック」や、通気性が良く根に優しい「素焼き(テラコッタ)」、デザイン性の高い「陶器」などがありますが、どの素材を選ぶにしても絶対に守ってほしい条件が一つあります。それは、「底穴」がしっかり開いているものを選ぶことです。
IKEAの「鉢カバー」に直植えは絶対ダメ!
IKEAで売られているおしゃれな鉢(鉢カバー)の多くは、底に穴が開いていません。これに直接土を入れて植えてしまうと、余分な水が抜けずに確実に根腐れします。必ず「底穴のある鉢(インナーポット)」に植え替えてから、それを鉢カバーの中に入れて飾るようにしてくださいね。
ハイドロカルチャーからの植え替え方法

IKEAのグリーンコーナーでは、通常の土植えのほかに、ガラス容器やハイドロボール(茶色い粒状の粘土焼成体)を使った「ハイドロカルチャー(水耕栽培)」仕様のパキラもよく見かけます。清潔感がありおしゃれですが、「もっと大きく育てたい」「他の鉢植えと管理方法を統一したい」という理由で、土植えへの切り替え(移行)を検討される方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、ハイドロカルチャーから土植えへの変更は可能です。ただし、成功させるためには「根の性質の違い」を理解しておく必要があります。実は、水の中で育ったパキラの根(水根)は、土の中で育った根(土根)とは構造が全く異なります。
水根は、常に水がある環境に特化しているため、乾燥に対する耐性がほとんどありません。また、土の中に存在する雑菌や微生物に対する抵抗力も弱いです。そのため、いきなり普通の土に植え替えて「乾かし気味」に管理してしまうと、環境の激変に耐えられず、あっという間に枯れてしまうリスクがあるのです。
この「移行ショック」を和らげ、スムーズに土の環境に慣れさせるための具体的な手順をご紹介します。
失敗しない移行手順
- 根を洗う:容器から取り出し、根に付着しているハイドロボールやゼオライトを丁寧に洗い落とします。無理に剥がすと根がちぎれるので、取れないものはそのままでも構いません。
- 清潔な土に植える:使用する土は、雑菌が少なく肥料分の入っていない「新しい土」を使います。いきなり栄養たっぷりの培養土を使うよりも、最初は赤玉土(小粒)単体など、無菌で清潔な用土を使うほうが、デリケートな水根への負担が少なく安全です。
- 水やりのリハビリ期間:植え替え直後は、土を乾燥させすぎないように注意します。最初の1ヶ月ほどは、通常の土植えよりも頻繁に水を与え、徐々に水やりの間隔を空けていくことで、少しずつ「土が乾く」というサイクルに根を慣れさせて(土根化させて)いきます。
まーの豆知識:肥料は厳禁!
ハイドロカルチャーから土へ移行する際、早く大きくしたいからといって、元肥(もとごえ)入りの土を使ったり、すぐに液肥を与えたりするのは絶対にNGです。
環境の変化で弱っている根に肥料を与えると、浸透圧の関係で水分が奪われる「肥料焼け」を起こし、一発で枯れてしまいます。肥料は、新しい葉がしっかりと展開し、完全に土の環境に馴染んだのを確認してから(最低でも1ヶ月後以降)スタートしましょう。心配な場合は、肥料ではなく「活力剤(メネデールなど)」を与えるのがおすすめです。
IKEAパキラの植え替え手順と管理方法
準備が整ったら、いよいよ実践です。ここでは、IKEAで購入したパキラ特有の「古い土(ココピート等)をしっかり落とす」という点に重点を置いた手順と、その後の管理方法について詳しく解説します。初めての方でも失敗しないように、ステップごとに見ていきましょう。
用意するものリスト
- 新しい鉢(一回り大きいサイズ)
- 鉢底ネットと鉢底石
- 観葉植物用の新しい土
- 割り箸(土を突く用)
- 剪定バサミ(清潔なもの)
- 新聞紙やビニールシート(汚れ防止)
- バケツ(根を洗う場合)
失敗しない具体的な植え替え手順

準備万端整いましたか?それでは、いよいよ実際の植え替え作業に入りましょう。作業をスムーズに進めるための最大のコツは、「植え替えの数日前から水やりをストップし、土を完全に乾かしておくこと」です。
土が湿っていると重たくて扱いにくいだけでなく、根が土から離れにくいため、無理に剥がそうとして根を傷つけてしまう原因になります。土がサラサラの状態なら、作業は驚くほど楽になりますよ。
1. パキラを鉢から引き抜く
まず、現在植わっている鉢からパキラを取り出します。IKEAのプラスチック鉢は比較的素材が薄くて柔らかいものが多いので、鉢の側面を外側から手で揉むように押したり、縁を軽く叩いたりして、土と鉢の密着を緩めてあげると抜けやすくなります。
抜く際は、幹(みき)の根元をしっかりと持ち、反対の手で鉢を支えながら引き抜きます。もし抜けない場合は、無理に引っ張らず、鉢を逆さまにして底穴から割り箸などで土を押し出すか、鉢の縁をテーブルの角などでトントンと軽く叩いて振動を与えてみてください。
2. 古い土を落とす(ここが最重要!)
ここが、IKEAのパキラを日本の環境に適応させるための一番の正念場です。根鉢(根と土の塊)を崩し、根に絡みついている古い土(ココピートやピートモス)を丁寧に取り除いていきます。
IKEAの土は繊維質で、スポンジのように根に強く絡みついていることが多いですが、指先やピンセットを使って優しくほぐしてください。もし「虫対策」を徹底したいのであれば、手で落とすだけでなく、以下の「丸洗い」をおすすめします。
根の丸洗いテクニック
バケツに常温の水を張り、その中で根を振るようにして洗います。土の繊維を完全に洗い流し、根を裸の状態(ベアルート)にすることで、コバエの卵や幼虫が隠れる場所をゼロにします。
※洗った後は、直射日光に当てず、すぐに次の植え付け作業に移ってください。根を乾かさないことが大切です。
土を落としたら、根の状態をチェックしましょう。黒く変色してブヨブヨになった「腐った根」や、乾燥してスカスカになった枯れた根があれば、清潔なハサミでカットして整理します。白や茶色で硬さのある「元気な根」は、吸水のために重要なので切らないように注意してください。
3. 新しい鉢に植え付ける
新しい鉢の準備をします。底穴を鉢底ネットで塞ぎ、その上に水はけを確保するための「鉢底石(軽石)」を鉢の深さの1/5程度(2〜3cmほど)敷き詰めます。
次に、新しい土を少しだけ入れ、パキラを置いて高さを調整します。この時、鉢の縁から土の表面までに1〜2cmほどのスペース(ウォータースペース)が確保できるように高さを決めます。深植えしすぎると幹が腐る原因になり、浅すぎると根が出てしまうので、慎重に位置を決めましょう。
パキラの位置と向きが決まったら、周りに少しずつ土を足していきます。ここで大切なのが「棒で突く」作業です。割り箸などの細い棒を使い、根と根の隙間や、鉢の側面と土の間に棒を差し込み、サクサクと軽くつつきながら土を送り込んでいきます。これをサボると、鉢の中に空洞ができ、根が水を吸えずに枯れてしまう原因になります。
4. たっぷりと水やりをする
植え付けが終わったら、仕上げの水やりです。ジョウロを使い、鉢底から流れ出る水が「透明」になるまで、たっぷりと水を与えます。
最初は茶色く濁った水が出てきますが、これは土に含まれる微細な粉(微塵:みじん)です。この微塵を水流で押し流すことで、土の粒と粒の間に適度な空気が通り道ができ、根が呼吸しやすい環境が整います。同時に、水流の力で土が締まり、根と土がしっかりと密着して株が安定します。
受け皿の水は必ず捨てる
最後に、受け皿に溜まった水は必ず捨ててください。ここまでの作業、本当にお疲れ様でした!
植え替えと同時に剪定を行うメリット

「パキラが天井に届きそうなくらい伸びすぎてしまった」「枝が横に広がりすぎてバランスが悪い」……そんな悩みをお持ちなら、植え替えのタイミングこそが、思い切って樹形を整える「剪定(せんてい)」のベストチャンスです。
「植え替えで弱っているのに、枝まで切って大丈夫?」と心配になるかもしれませんが、実はその逆です。適期(5月〜9月)であれば、植え替えと剪定を同時に行うことは、むしろ植物にとって非常に理にかなったケアになります。
その理由は、植物の「水分の収支バランス」にあります。植え替えで根を整理したり土を落としたりすると、どうしても根の量は一時的に減り、水を吸い上げる力が弱くなります。その状態で葉っぱだけが大量に残っていると、葉からの水分蒸発(蒸散)に給水が追いつかず、脱水症状を起こしてしおれやすくなってしまいます。
そこで、根をいじると同時に枝葉もカットして減らしてあげるのです。こうすることで、「根の給水力」と「葉の蒸散量」のバランスが保たれ、結果として植え替え後の回復が早くなるというメリットがあります。
失敗しない剪定位置と「成長点」の見つけ方
では、具体的にどこを切れば良いのでしょうか。パキラの剪定で意識すべきなのは、幹にある「成長点」と呼ばれる部分です。
幹をよく観察すると、節のように少し膨らんでいる部分や、以前葉っぱが落ちた跡のような横線が入っている場所が見つかるはずです。これが成長点です。この部分には新しい芽を出すための細胞が詰まっています。
剪定をする際は、この「成長点の少し上(1〜2cm上)」をスパッとカットします。成長点を残して切ることで、カットした下の部分から新しいかわいい新芽がニョキニョキと出てきます。逆に、成長点のないツルッとした部分で切ってしまうと、新芽が出ずにその枝自体が枯れ込んでしまうことがあるので注意が必要です。
まーの豆知識:丸坊主にしても大丈夫?
パキラは非常に生命力が強い植物です。成長期であれば、葉っぱを一枚も残さず幹だけにする「丸坊主(強剪定)」にしても、1ヶ月もすれば新しい葉が茂ってきます。「少し切りすぎたかな?」と思うくらい思い切ってカットしても、意外となんとかなるのがパキラの頼もしいところです。
切り口のケアも忘れずに
太い枝や幹をカットした場合は、切り口から雑菌が入ったり、水分が抜けすぎたりするのを防ぐために、市販の「癒合剤(ゆごうざい)」を塗っておくのがプロの技です。木工用ボンドでも代用可能ですが、癒合剤の方が殺菌成分が含まれており安心です。このひと手間で、切り口の治りが早くなり、病気のリスクをグッと下げることができますよ。
植え替え直後の水やりと置き場所
無事に植え替えが終わっても、まだ安心はできません。実は、パキラを枯らしてしまう失敗の多くは、植え替えそのものの失敗ではなく、この「植え替え直後の1〜2週間」の管理ミス(過保護)で起きています。
植え替え直後のパキラは、根が切れたり環境が変わったりして、人間で言えば「大きな手術を受けた直後」のような、体力を激しく消耗したデリケートな状態です。この時期に必要なのは、成長を促すことではなく、とにかく「安静にして休ませること(養生)」です。ここで焦って回復させようと無理をさせないことが、成功の鍵を握ります。
アフターケアの3大鉄則(リハビリ期間)
- 置き場所:植え替え後1〜2週間は、直射日光の当たらない「明るい日陰」や「レースカーテン越しの窓辺」に置きます。風通しの良い場所が理想ですが、エアコンの風が直接当たる場所はNGです。
- 水やり:最初のたっぷりの水やりの後は、土の表面が白っぽく乾くまでじっと待ちます。心配で毎日水をやると、傷ついた根が呼吸できずに腐ってしまいます。「乾かし気味」が基本です。
- 肥料:植え替え後2〜3週間は肥料(液肥・固形肥料ともに)を与えません。弱っている根に肥料は刺激が強すぎ、逆効果になります。新芽が動き出して元気になってから再開しましょう。
1. 置き場所:直射日光は厳禁!「明るい日陰」へ
「パキラは日光が好きだから」といって、植え替え直後にいきなり日当たりの良い窓辺に出すのは絶対にNGです。根の給水力が落ちている状態で強い光を浴びると、葉からの水分蒸発(蒸散)が激しくなり、水不足でしおれてしまうからです。
最初の1週間〜10日ほどは、部屋の少し内側や、ブラインド越しの柔らかい光が当たる「明るい日陰」で管理してください。そこから徐々に光の強い場所へ移動させ、少しずつ通常の環境に慣らしていくのが理想的なリハビリコースです。
2. 水やり:毎日の水やりは「逆効果」
植物を愛するがゆえに、「早く元気になってね」と毎日お水をあげたくなりますよね。でも、この時期の過度な水やりは、弱った根を窒息させる一番の原因になります。
植え替え当日にたっぷりと水をあげたら、次は「土の表面が乾いて白っぽくなるまで」水やりはストップしてください。根が水を求めて伸びようとする力を引き出すためにも、少しスパルタ気味に乾かすことが、結果として早い回復につながります。
3. 肥料:弱った体にステーキは重すぎる
「元気がないから栄養をあげなきゃ!」と肥料を与えるのもよくある間違いです。人間も体調が悪い時に脂っこいステーキを食べられないのと同じで、弱った根にとって濃い肥料成分は刺激が強すぎ、逆に根を痛める「肥料焼け」を引き起こします。
どうしても何かしてあげたい場合は、肥料ではなく、植物の負担にならない「活力剤(メネデールやリキダスなど)」を規定量より薄めて水やりの代わりに与える程度に留めましょう。本格的な肥料は、新しい芽が出て完全に元気になってからのお楽しみにとっておいてください。
葉が落ちたり枯れる原因と対処法

植え替えから数日〜1週間ほど経った頃、「パキラの下の方の葉が黄色くなってポロポロと落ちてしまった!」という現象が起きることがあります。これを見ると「失敗したかも……」と焦ってしまいますが、実はこれ、必ずしも「枯れ」のサインではありません。
環境が急激に変化したり根が一時的にダメージを受けたりすると、植物は「生きていくのに必要なエネルギー」を確保するために、光合成効率の悪い古い葉(下の葉)を自ら切り捨てて、新芽や成長点に栄養を集中させようとします。つまり、自分の身を守るための賢い「生理現象(リストラ)」であることが多いのです。
まずは慌てずに、直射日光の当たらない明るい日陰で、じっくりと様子を見守りましょう。黄色くなった葉は自然に落ちるのを待つか、手で優しく取り除いてあげればOKです。
危険なサインとリカバリー方法
ただし、「生理現象」ではなく、本当の「SOS」である場合もあります。以下の症状が出ていないかチェックしてみてください。
| 症状 | 考えられる原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| 葉全体がくたっと垂れる | 深刻な水切れ、または根が水を吸えていない | 涼しい場所で葉水を与え、湿度を保つ。 |
| 葉が白っぽく変色する | 直射日光による「葉焼け」 | すぐに日陰へ移動。焼けた葉は元に戻らないのでカット。 |
| 幹がブヨブヨする | 根腐れが進行している | 腐った部分を切除し、乾燥気味に管理(重症です)。 |
植え替え直後で根がうまく機能していない時は、口から水が飲めない状態に似ています。そんな時は、点滴のように皮膚から水分を補給してあげるのが効果的です。霧吹きを使って葉の表と裏に水を吹きかける「葉水(はみず)」を、朝晩こまめに行ってあげてください。これだけで葉の脱水を防ぎ、回復を早めることができます。
根腐れを防ぐための日常管理のコツ
パキラを枯らしてしまう原因のナンバーワンは、ズバリ「水のやりすぎによる根腐れ」です。特に、IKEAで購入した鉢カバー(底穴のない飾り鉢)を使っている方は、構造上のリスクを知っておく必要があります。
IKEAの鉢カバーはデザイン性が高くておしゃれですが、底に穴がないため、水やり後の余分な水が逃げ場を失い、カバーの底に溜まりやすい構造になっています。もし、インナーポット(中のプラスチック鉢)の底が、この「溜まり水」に浸かったままになっていると、根は常に水中で窒息状態になり、あっという間に腐ってしまいます。
IKEA鉢カバーを使う時の鉄則
水やりをする時は、必ず中のインナーポットを取り出し、シンクや風呂場などでたっぷりと水を与え、「しっかりと水を切ってから」鉢カバーに戻してください。
もし入れたまま水やりをする場合は、その都度鉢カバーを傾けて、溜まった水を最後の一滴まで捨てること。このひと手間を惜しまないことが、根腐れを防ぐ最大の防御策です。
また、水やりのタイミングも重要です。「なんとなく毎日」「土の表面が乾いたからすぐ」ではなく、メリハリを意識しましょう。パキラの幹は水を溜め込むタンクの役割を持っているので、多少の乾燥にはビクともしません。
土の表面が乾いてから、さらに1〜2日(冬場なら3〜4日)待ってからあげるくらいで丁度いいのです。指を土の第一関節まで入れてみて、中の土まで乾いているか確認したり、割り箸を刺して湿り具合をチェックしたりするのもおすすめです。
正しい育て方や肥料を与えるタイミングについては、信頼できる園芸肥料メーカーの情報も非常に参考になりますので、ぜひ一度目を通してみてください。
(出典:株式会社ハイポネックスジャパン『パキラの育て方や栽培のコツ』)
IKEAのパキラを植え替えて長く楽しむ
IKEAのパキラは手頃な価格で手に入り、お部屋の雰囲気をガラリと変えてくれる素敵なインテリアグリーンです。購入して最初に少し手間をかけて土を入れ替え、日本の環境に合った土にしてあげるだけで、その後の管理が驚くほど楽になりますし、虫の悩みに怯えることなく何年も元気に成長してくれます。
「植え替え」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、今回ご紹介したポイントさえ押さえれば、決して難しい作業ではありません。ぜひ、最適な時期を見計らってチャレンジしてみてくださいね。手をかけた分だけ、きっと愛着も湧いてくるはずです。
※この記事で紹介した方法は一般的な目安です。植物の状態や栽培環境によって結果は異なります。正確な情報は公式サイト等もご確認の上、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。

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